トルコシンバルファクトリーツアーレポート
1日目:Istanbul Mehmet
ハンマリング
シート状になったシンバルは、今度は熟練の職人により、1枚1枚ハンマー作業で形が整えられていきます。
このハンマリングの工程がサウンドのキャラクターを決める大事な部分だというのは、
私ももちろん知識としては知っていましたが、実際には、このハンマー工程と、キャスティング工程、
そして、この後に行われるレイジングの工程、この3つとも重要な要素なんだそうです。
そりゃそうですよね。
あの鋳造の設備や管理なんてとても大変だし、
レイジングも本当に職人技で、ウェイトコントロールなどもこの作業で行われるので、
花形のように謳われるハンマリングもやはり製造工程の一部なんだなぁ。と感じました。
ハンマリングの職人さんは全部で4人ぐらいのようで、何となく流れ作業のような感じでした。
シートから最初にハンマーをする人、それを確認しながらさらにハンマーする人、
さらにそれをハンマーする人、仕上げのハンマーをする人。
企画書が段々上層部に届けられるような感じでしょうか(笑)
キンキンキンキンと高音が工場中に響きます。
この作業を1日8時間もやるようなので、耳がやられてしまわないように耳栓をしながらハンマーをする職人さんもいました。
トルコに来て面白いなと思ったのが、シンバル職人の皆さんは、別にドラマーという訳でもないんだそうです。
3社回って私が確認した範囲ではAGOPに2人程ドラムを叩く方がいましたが、
ほとんどがドラムをプレイする人ではなさそうでした。
このハンマリングの作業、サウンドのキャラクターを決める部分ではあるものの、
何をどういう風にしているのか、何を良しとしてサウンドを作っているのかというのは、ドラマーの視点とは違うのかもしれません。
トルコのシンバル作りは、元々はZILDJIANのファミリービジネスだったものが、
1977年頃にZILDJIANのトルコ工場が閉鎖され、アメリカへ拠点を移したことをキッカケに、
トルコに残った職人さん達が興したものです。
それ以前の一子相伝のような形で続いてきたトルコのシンバル作りの転換期とも言えると思いますが、
この時も1人で全ての工程ができるわけではないのでメメットさんやアゴップさんなど雇われていた職人達が独立してISTANBULを作ったわけですね。
レイジング工程
シンバルの仕上げともいえるレイジングの工程。
このレイジングで、シンバルの強度やウェイト、エッジの整形などが行われます。
もちろんサウンドにも大きく影響する部分で、レイジングなしのターク仕上げと、
レギュラーフィニッシュでは全く異なるキャラクターになりますよね。
職人さんも微妙なテコの入れ方で溝を作っていきます。
削り節を我々の方に向かってピュンピュン飛ばしてきたり(笑)本来は慎重な作業なんでしょうけど余裕がスゴイ♪
ここも興味深いところがあって、レイジングは最終工程のようなイメージでしたが、
すぐ隣でハンマーしているので、レイジングした後にまたハンマーしたりもしていました。
簡単そうに見えるけど、、、スンゴイ技です。
シンバル職人と言いますが、1人で全部の工程をやる人というのはあまりいないそうで、
見習いから熟練になるまで基本的には専門職のような感じで1つの工程を詰めていくらしく、
工程を跨いで職長になるようなことはないのだそうです。
この辺もドラマー的な感覚で言うと全部自分でやりたくなってしまいそうだなぁ。と思いましたが、
イタリアのスピッチーノさんや、オーストラリアのクレイグローリッセン、
デンマークのファンクシンバルなどがまさにドラマーでシンバルも作る人達で恐らくは各工程の勉強もしているのだと思います。
でもあの金属を溶かす設備はなかなか個人では難しいと思うので、
ブランクのキャストを調達してそれ以降の作業を自分でやっているのかも。。
なんにしても、ちょっとやってみようかな・・・・では済まないレベルの知識と技と設備が必要です^^;
日本でも、アートシンバルの山本さんや、小出シンバルの小出さん、emj modの延命寺さんなどがそうですね。
というわけで、伝統のシンバル作りのハイライトの連発で大興奮でした!
昼食は初の本場トルコ料理を頂き、午後はシンバルの選定&買付です^^