> TERRY BOZZIO DRUM CLINIC 2007


■ クリニックスタート ■

Sec1 ドラムソロ about 30min. 
スローンに腰かけ、グロッケンを使ってセットのチューニングをする姿を披露。彼のようにメロディや音階を意識したプレイスタイル、しかも多点キットなので、シビアなチューニングは必須なのであろう(打面の詳細は確認できなかったが、某雑誌を参照するとそれぞれの打面にコードが書いてある)。その後、30分にも及ぶドラムソロの開始。4/4拍子を基盤としながら様々なフレーズを展開していく、手で叩く難解フレーズをそのまま足で行うパターンは圧巻だった。テクニックはもちろん最上級なのだが、グリップやストロークの使い方も面白かった。アメリカン・フレンチ(ティンパニグリップ)・フィンガリングを巧みに使い分け、さらには小指のみを外したり、パワフルなストロークではかなり力を込めてストロークをするなど、叩くタイコの位置やドラムソロの流れによってチェンジさせていた(グリップについては後のQ&Aで解説)。テンションの上げ方、ソロの盛り上げ方が素晴らしかった。荒々しいタフなスタイルも彼の魅力の一つなのだろう。57才には到底見えない。

 

Sec2 クリニック〜Q&A  about 1hour.
1. ドラム誕生の歴史〜多点キット発展への歴史を彼なりの見地で解説。ビリー・コブハムなどの影響は大きい物があったという。ドラムセットというものは近代的な楽器なのでどんどん自分達でルールを作っていけばいいのではないかと持論を展開していた。

2.
 テリー・ボジオ曰く、ドラムを演奏する上で最も意識しているエレメント(要素)は次の5つだという。
◆リズム
メロディ
◆ハーモニー
ダイナミクス
◆オーケストレーション
各パートの解説と実践・練習方法を踏まえた説明はとてもわかり易く、かなり音楽的な内容であった。テクニックの部分だけピックアップすると、あれだけの事を演奏するミュージシャンの基盤は意外とシンプルなものだった。ただ、テリー・ボジオのレベルに到達するまでにはもちろん相当の鍛錬を積んできているはずで、例えば一つのパターンがあったらそれの掘り下げ方が尋常ではなく、あらゆるバリエーションを試している。タムの移動にしても考えられる展開を消化しまくっているようだ。自身が行う「作曲」にも、この5つの要素が生きているという。

3. Q&A
 (時間の関係上、質問は2つのみ)
Q. グリップについて意識していることはなんですか?
A. 早い音符のコントロールは指先に、パワー感が欲しいときはもっと深い位置(第二間接あたり)に支点を作りスティックをホールドする。グリップや腕の動き(移動などの)は車のワイパーをイメージして貰うと分かりやすいと思うけど、あの感じで無駄のないような動きで行う。ティンパニ(フレンチ)グリップやフィンガリングを主に使うが、大きな音は筋肉を使って強く叩くし、早いものはフィンガリングを使っている。練習としてはStick Control(大定番の教則本)をフィンガリングのみで一冊終えたし、一回の手首の動きに対して3連打4連打を指で拾う練習もよくした。。しかしこれらの奏法については自分に合ったものを選択すればよいし、なにより音楽的なアイデアが最も重要でテクニックはそれを表現するためにあるもの。より高いアイデアを表現するためにもっとよいテクニックを身につけたいし、死ぬまでレベルアップだと思っている。そして何よりもフィーリングを重要にしている。

Q. フィジカル的な事で気をつけていることはありますか?
A. 最近はしてないが、身体はずっと鍛えてきた。肉体・精神・インスピレーション(感覚)・物事を冷静に分析できるような思考、のバランスを常に意識して日々を過ごしている。

 

Sec3 バンド演奏  about 20min.
今回ツアーのため供に来日したギターのアレックス・マハチェクとベースのダグ・ランを迎えて数曲の演奏。3人揃って超絶技巧。そのレベルの高さに客席から大歓声が上がる。息が詰まるような緊張感が続く展開の連続であった。テリー・ボジオのプレイはクリニックの内容を集約させた見事なプレイだった。ウマすぎる。