GATEWAYオリジナル
『2階建てペダルと高床式ハイハットスタンド製作日記』

■概要
2013年〜2014年、当店の歴史に残る特注品ペダルとハイハットスタンドを製作しました。

構想〜製作完了までにそれぞれ半年以上という長い期間がかかりましたが、私たちスタッフの記憶に深く残ったこのプロジェクトについて、総括の意味も込めて 記録に残します。

記 2014/11月
 GATEWAY店主 とら植木    



■エピソード2 / 『高床式ハイハットスタンド』

無事に「2階建てトランスフォームペダル」を納品して数か月後、
彼のドラム発表会を観覧させて頂いた日に、実はハイハットスタンドの製作依頼も頂きました。

前回のペダルが出来たことで、ハイハットスタンドもできそうな感触はなんとなーくありましたが、この時点ではまだ具体的なアイディアには至っておらず、納期未定という事で承りました。
また物思いにふける日々が始まります。

構想を練りだしたのは、春。。。
消費税増税で、当店の手作りWEBサイト上の価格変更作業が血反吐を吐くほど大変だったために大幅に時間をロスしてしまいましたが、ようやくアイディアにも目処がついて、夏の後半から試作品の製作が始まります。

この時の材料は以下の通り。

☆材料
@DW / DW6500フラットベースHHスタンドの芯の部分
APEARL / P-830のフットボード
BYAMAHAのイスの脚やDWスタンドの残骸パーツを分解して再構成したワンオフパーツ類
Cそこそこ柔らかい頭
D根性
E友情
F愛情
G工場長(篠原)の、不可能を可能にする高い技術力


またもや、最終的には篠原が何とかしてくれる作戦(笑)が発動し、秋も深まってきた頃ついに試作品が完成します。

 


ペダル部分を底上げするのと折り畳みの方法にかなり頭を捻りましたが、ここまでは意外とシンプルにいきそうな予感もありました。


しかし、、

出来上がったスタンドの高さや、シンバルのセッティング位置の確認のためにご依頼人に試奏にご来店頂いた時の事です。

なんと、シンバルを置いておきたい位置と、ペダルを置いておきたい位置に誤算があることが発覚します!

これは寝耳に水の衝撃の問題!!何とかその場を冷静に取り繕うので精イッパイ。。

つまり、ペダル部分はイスのシートのすぐ下に置きたいのですが、それに合わせると、ハイハットはスネアに被り過ぎてしまうんです。
反対に、シンバルの位置を優先すれば、ペダルが少し遠くなってしまいます。
ペダルとシンバルの位置関係をあと10cmぐらい離せないと演奏がしにくい。。という事になりました。

 

 

ペダルの位置をちょうど良い所に持ってくると、ハイハットがスネアに被り過ぎてしまう状態


この問題が発覚したのが10月末、そして今回はどうしても11月の中旬までに納品完了しなければならないという約束もありました。

以下、篠原談
───
二階建てトランスフォームペダルの時は、結果オーライで手前になってしまったフットボードですが、今回は意図的に手前にしなければいけないという事になりました。
ただ、これ以上、パーツを増やして構造を複雑にしたくない。
何より時間があまりない。
やはり今の状態を生かしてどうにかできないものか・・・。

現実は甘くない!
残り期間は約2週間!

がんばれ篠原!
負けるな篠原!


ここから、店頭スタッフのフォーメーションは、プランZ(最終奥義形態)に移行。

店長とら→店番、WEB対応、出張、そして篠原の応援&夜更かしのお供、試作品の批評。
スタッフ中村→店番、WEB対応、篠原の体力が落ちてきたら店内BGMをメタルに変更して回復。
工場長篠原→→ひたすら作業作業作業。

怒涛の再設計&夜更かしの日々が幕を開けました。

もちろんこの間も、SHOPとしてはこのスタンドだけに100%集中するわけにはいかない事情もあるので、他のお客様からの修理改造ご依頼 品や、店頭業務も滞りなく進めなければなりません。
営業時間中は通常業務、閉店後にこのスタンドに集中という必殺パターンになります。

そしてついについについに!!
何とかこれを乗り切って完成したのが、この『高床式ハイハットスタンド』です。
 

 

写真ではわかりにくいですが、ペダルの取り付け位置を当初の反対側に持ってきて、しかもチェーンを引っ張るためのアクション部分も、反対側からの踏込を考慮して中継ロッドを多用したギミックになっています。折り畳みもバッチリ♪
 

以下、篠原談

トランスフォームペダルの時の様なチェーン方式では、滑車を新たに増設したり、その滑車を固定するアームも必要になったりと構造が複雑になる為に別の方法を考える事にしました。
そこで、私の豆粒ほどの脳みそをフル回転させて絞り出したのが、、、

【リンク式プッシュロッド方式(勝手に命名)】です。

HHスタンドの脚から手前に出ていた本体パイプ部を180°反対方向に、そして引っ張ることが出来なくなったスぺースにコイツを増設しました。

引っ張ることが出来なければ押せばいい。発想の転換ですね。
問題のアクションは、機構が増えた分バネに掛る重さも増えて元よりは少しだけ鈍くなってしまいましたが、バネ調整で何とかなる範囲でしたので合格です。
残る問題はケースにしまえるか?

これはトランスフォームペダルの時にも四苦八苦した関門ですが、、、あの時の私とは違うのだよ!という事で、、

フットペダルと【リンク式プッシュロッド方式】を繋ぐパーツを自作して、折れ曲がる構造にしました。
これで、この問題も難なくクリアしました(このパーツが一番の手間でしたが)。
───


やはりペダルの時と同じく、かなり大変な作業でした。
でも、試作品のままでは『惜しい!』というスタンドになっていたので、何とか軌道修正する時間があって助かりました。


これでめでたく、フットペダルとハイハットスタンドの完成です。

いつか、歴史に名を残してきた名器達と並ぶ日が来るかな?_?

これにて、当店の魂を込めたプロジェクトは一件落着!
めでたしめでたし♪
今後の彼のドラマーとしてのキャリアに唯一無二の花を添えることができたと思います。


私達スタッフも、今回の件で、一つのアイディアを製品にするまでの果てしない苦労や、出来上がったものがお客様の良き相棒として息が吹き込まれる様子に、これ以上にない格別の喜びを味わう事が出来ました。

正直に、このプロジェクトがスタートする前は、ここまでのものが出来るとは予想していませんでした。
でも、不思議なもので、今回の件では一つの壁をクリアすると、さらに改良のためのアイディアが浮かんできたりと、導かれるようにして構想よりも遙かに素晴らしいものが生まれたと断言できます。

プロショップの看板を掲げている当店には、まさに自分達の知識や技術を試すだけでなく、それを底上げする絶好の機会になりました。

という訳で、皆様、何かお困りのことがあれば、ぜひ当店へご相談ください!
かなり複雑な作業でも、ウチの篠原なら何とかできるかもしれません(笑)






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