■ シンバルの製造工程

1.メルティング

シンバルの原材料となる数種類の金属(銅、錫、銀B20のみ)を溶鉱炉で溶かし、調合が行われます。

2.キャスティング

合金は型に流し込みシンバルの原型アロイとなる。アロイは冷やされた後、表面の余分な化合物を取るためマシンで磨かれ、適切なサイズになるように重量ごとに仕分けされる。

サイズごとに仕分けされたアロイ

3.ヒーティング&ローリング

手のひらぐらいの大きさのアロイは、オーブンで約720度の高温になるまで熱せられ、ローリングマシンで引き伸ばされる。この工程は最適なサイズになるまで、7〜12回程度、約45分間繰り返し行われる。長い棒が付いたへらでピザを出し入れするように作業は行われているが、近づいただけで汗が出てくるほど熱く重量もあるため、かなりの重労働である。
 

オーブンによるヒーティング作業

ロールマシンにより引き伸ばされるローリング作業

4.クーリング

高温の状態から室内で常温になるまで自然に冷やされる。この状態では、まだ金属が安定していないので落としただけで簡単に割れてしまいます。

5.プレス(ベル)

シンバルのベルとなる中心部分に印を付け、もう一度オーブンで加熱をしてベルの形状にパンチプレスします。ベルの形状はシンバルのサウンドを特定する倍音に大きく影響するため、モデルごとに決まった形状にプレスされます。

6.クーリング

再び、室内で常温になるまで自然に冷やされます。まだ金属は非常にもろい状態です。

7.焼入れ&冷却

金属の強度を増すために、オーブンで加熱をした後、冷水に浸して一気に冷却をします。この焼き戻し工程によって安定した分子構造が形成されるので金属の強度が増します。

冷却槽に沈めて一気に冷却されるシンバル

8.成形

センターに穴を開け、仕上がりサイズより約1/4インチ大きめにカットして、大まかな形を作る。
 

ドリルでシンバルの中央に穴を開ける
センタリング

各サイズに大まかにカットされる

9.プレス

マシンハンマー仕上げのシンバルはハンマリングの圧力による反りを防ぐために、手でぐにゃぐにゃに曲げられて逆にそらされます。逆反りは欠かすことの出来ない工程なのだそうです。そして、モデル専用の型に入れて80トンの圧力で基本的な形に成形されます。

10.検品

モデル専用のテンプレート正確にプレス出来ているか検品が行われる。もちろん、基準に満たないものは排除され、再び溶解します。

11.ハンマリング

ハンマリングはシリーズによって異なったハンマー処理が施される。
HHシリーズはチャーリー・ブラウン氏に代表される職人たちの手作業によるハンドハンマーで成形されます。作業はハンマーとテンプレートによる職人技で行われます。
AAX、HHXシリーズは、人がシンバルを回してマシンハンマーにより成形されます。HHXシリーズは職人によるハンドハンマーと思い込んでいましたが、マシンハンマーということになります。
AAシリーズは、全自動のマシンハンマーにより成形されます。
マシンは、ハンマーの角度、強さ、間隔をプログラムすることが出来ます。もちろん、テンプレートで人による検品が行われる。
 

チャーリー・ブラウン氏による絶妙のハンドハンマー

カップ周辺は特に慎重にハンマリングが行われる
 

AAXシリーズは人がシンバルを回してマシンハンマーが行われる

チャイナシンバルも人がシンバルを回してマシンハンマーが行われる

コンピュータ制御の全自動で行われるマシンハンマー

12.レイジング

レイジングはシンバルに溝を彫るため旋盤による手作業で加工が行われ、表面の不純物を取り除くだけでなく音溝による音の波の伝わり具合をコントロールし、シンバルの厚みをも決定する工程でサウンドへ大きな影響を与えます。裏面から表面という順番で行われ、両面レイジングを行う予定で製作されたシンバルは、裏面だけレイジングした状態ではバランスが崩れふにゃふにゃになるそうです。


手作業でレイジングが行われる


13.エッジング

シンバルは正しいサイズに整えられ、外周を定められた角度に仕上げられます。
そして、VAULT(貯蔵庫)で約1週間寝かされ、シンバルを落ち着かせます。


エッジが専用マシンで丁寧に仕上げられる


14.サウンドチェック

マーク・ラヴ氏に代表される熟練のテスターがサウンドテストとキズなどがないか厳しい商品チェックを行います。ここで不合格となったシンバルは、レイジングからやり直すか、再び溶解します。

15.仕上げ(ラッカー)

ブリリアントフィニッシュを除くナチュラルフィニッシュ全てのシンバルに、ラッカー仕上げが施されます。作業はラッカー液に浸けることで均等にコーティングされます。薄さは約3ミクロンですので、コーティングをしない状態でのサウンドの変化やサビを防ぐ効果を考慮するとコーティングによるサウンドの影響は気になるものではありません。しかし、ハンドハンマー系シンバルでは、サウンドの変化を期待している方も多いのが現実です。


ラッカー塗装後の乾燥


16.仕上げ(バフがけ)

ブリリアントフィニッシュのシンバルは、手作業とハイスピードバフがけ機により、表面が磨かれ光沢のある仕上げが施される。ブリリアントフィニッシュにはラッカー塗装は行われません。
 

ハイスピードバフがけ機により片面のみバフがけが行われる

左のマシンから右のマシンに手渡され裏面が磨かれる(手渡し風景はどことなく愛嬌があっておもしろい)

手作業によるバフがけ

17.ロゴ入れ

刻印とロゴマークのプリントが専用マシンで行われて商品は完成します。高級品のみロゴ入れは手作業で行われています。


専用マシンによるロゴ入れ


18.最終テスト

ここで最終のサウンドテストが行われます。検品に合格しなかったシンバルは、リサイクル容器に移されて再び溶解されます。もちろん、B8シリーズにもサウンドテストが行われています。


ベテランのテスターによる想像を越える厳選な最終テストが行われている