■ スティックの製造工程

1.木材の調達

北アメリカの南部 6ヶ所よりスティックに最適なアメリカン・ヒッコリーが採取されています。
ヒッコリーは高さ 20〜30mに達する真っ直ぐ伸びる木で、すそが広がっているのが特徴です。また、大木の方が耐久性に優れています。スティックには、すそから 3mまでのBATTと呼ばれる広がった部分が使用され、3mから上と枝の近くはスティックには使用されせん。
使用される幹の下の部分は本来の木目が出る安定した非常に良質な部分となります。BATTと呼ばれる部分の中でも上部は細くなっているため、木目がつまっています。また、BATTは、HEART WOODと呼ばれる赤色の中心部分と、周囲のSAPと呼ばれる白色の部分に分けられます。どちらも品質は同じですが、白色が好まれるためSAPのみスティックとして使用されます。

2.カット(その1)

スティックの材となるBATTは、まずは板状にカットされます。続いて、長さを揃えた角材にカットされたのち、均一な1インチ(約2.54cm)平方の角材に再度カットされます。この段階で節があるものは処分されます。
カットされた状態で、角材が持っている水分保湿量(モイスチャー)は、約50〜60%です。
木材が保有している水分は、フリーウォーターと呼ばれる根から吸い上げた水分と、木そのものが持っている大気中の水分の2種類があります。フリーウォーターは自然に蒸発するため抜く必要がありませんが、全体水分量の20%を占める木そのものが持っている水分は、人工的に抜く必要があります。
 

板状の木材を角材にカット

角材を一定の長さにカット

3.乾燥

角材は、まず自然に近い状態で乾燥されます。全体の80%あったフリーウォーターが自然に蒸発をして、周りの湿度に適合します。この状態で水分保湿量は、約10〜12%まで落ちます。
続いて、木そのものが持っている水分を人工的に、約2週間かけて窯で6%まで乾燥させます。木材は乾燥をして縮んで硬くなります。
水分保湿量10%の状態では、外気の湿度の影響を受けて製品になった状態で曲がってくることがあります。スティックの水分保湿量は6%がベストです。
一般的に、家具の水分保湿量は6〜8%と言われいています。
乾燥の工程が終了すると、一時的に倉庫で保管されます。
 

窯で乾燥中の角材

窯で乾燥中の角材
 

4.カット(その2)

水分保湿量6%に達した角材は、切削機によりダウエルと呼ばれる丸い棒状に削られます。一度に削ると木材にストレスが掛かり、そりの原因となるため、カットは3回に分けて少しずつ行われます。
このダウエルは、大小様々なドラム用スティックの元となります。
 

3回に分けて少しずつ
削られダウエルになる

3回に分けて少しずつ
削られダウエルになる

丸い棒状に削られた
ダウエル

5.検品

ダウエルは、傷、木目、そり、カラーはもちろんのこと、内部の組織に問題が無いかについても厳しいチェックが行われます。この検品に合格したものだけが、次の工程に進むことが出来ます。
さらに、チップに適した方向に手作業で並び替えられます。チップは細く削られるため強度が要求され、さらにサウンドに影響する部分でもあるため良い木目が出ている方向が選ばれます。
最後に、ダウエルの両端が切り落とされてこの工程は終了です。
 

検品用マシンに運ばれる
ダウエル

マシンによる検品が行われる

手作業でダウエルの
最終検品が行われる

6.センターレス研磨

スティックの形状を決定する最も重要な作業となる研磨の工程です。ヴィック・ファースでは、マレット以外のスティックは全てセンターレス研磨により製作されています。このセンターレス研磨は、鉄製のテンプレートと砥石を使ってスティックの形状が成形されます。研磨ホイールはグラインダーに取り付けられ、高速回転でスティックの元となるダウエルをスティックの形状に削り出します。高速回転で研磨されるため、高温になるのを防ぐため水をかけながら行われます。スティックの表面に付着した水分は4〜5分で蒸発するため、スティックの含水量への影響は無く水分保湿量は6%にキープされます。
水をかけずに研磨をすると熱でスティックは燃えてしまうそうです。

水をかけながら行われているセンターレス研磨

スティックの表面に付着した水分は4〜5分で蒸発
 

0.001インチの精度の
鉄製を持つテンプレート

0.001インチの精度の
鉄製を持つテンプレート

5A用の研磨ホイール

7.塗装

スティックの表面にはクリアーラッカーによる塗装が施されています。違和感をなくすため、大きな六角形の回転式マシンで塗装していないように思えるほどの微量のクリアーラッカーによる塗装が行われます。
また、シグネチャーモデルのカラーフィニッシュは、塗料に浸けこんで行われます。
 

塗装用の回転式マシンにスティックと塗料が入れられる

回転中の六角形の塗装マシン

塗料に浸けこまれるシグネチャーモデルのスティック

8.ロゴプリント

塗装が終了してロゴマークをプリントする前に、再度、不良品がないか検品が行われます。品質基準に合格したスティックは、コンベアで運ばれパッドプリンターによってロゴがプリントされます。


オートメーションでロゴマークはプリントされる


9.計量

計量の前に、再度、スティックに歪みがないか赤外線光ファイバーセンサーによる検品が行われます。スティックを回転させながらコンピュータ制御により行われるチェックで、わずかな狂いも検地します。
この検品に合格したスティックは、20段階の重量ごとに細かく分類されます。分類作業は、コンベアにより運ばれ、コンピュータスケールで行われます。この作業はオートメーション化されており、分類されたスティックは全自動で所定のボックスに振り分けられます。
 

赤外線光ファイバーセンサーによる検品とコンピュータスケールによる重量の分別

20段階の重量ごとに細かく分類されたボックス
 

10.トーン・ペアリング

同じ重さのボックスに振り分けられたスティックは、トーン・ペアリングを行うコンベアに運ばれます。スティックはマシンによる回転中に3ヶ所ハンマーで打たれ、基本周波数を検知します。そのデータはコンピュータに記録されて同じピッチのボックスに振り分けられます。


スティックのトーンはコンピュータ制御で基本周波数が検知されボックスへ振り分け


11.カラーマッチング

重量とピッチが揃えられたスティックの中から、手作業でカラーと質感が同じ2本のスティックが選ばれます。そして、ロゴの向きを合わせてスリーブに収められます。


重量、トーン、カラーの全てが同じ“パーフェクト・ペア”の完成
(カラー・マッチングを実際に体験)


12.ラッピング

こうして、パーフェクト・ペアとなったスティックは12ペアごとにラッピングされます。あえて仕分けしたものをミックスしてラッピングします。12ペアはそれぞれ異なった重さとピッチですが、ペアはパーフェクトな組み合わせとなっています。


ラッピングされているスティック