GIBRALTAR / 2007 NEW !!


 

 

今回のテーマは「珍商品!!」
その名の通り、“ヘンテコリン??”な商品達です!


こういった商品は普通なら、日の目を見ることもなく埋もれてしまうものも多く存在しますが、「次作や次々作を見てみたい!」と思わせるほどの斬新なアイディアだったとしたら、そのまま埋もれさせてしまうのはもったいないものです。

2007年のGIBRALTARは、そんなユニークなアイデアを前面に押し出した新製品の登場が目立っています。中でもこの3商品は、これまでの常識を覆す“斬新さ”と“ハードウェアの新しい可能性”を打ち出しただけでなく、専門メーカーならではの心意気がビシビシ伝わってきます。

今年のGIBRALTAR新製品からは、「結果はともかく、新しいものを創り出すためには、まず挑戦することが大事なのだ」というメーカーの姿勢が感じられます。


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 座って納得の新感覚!! DOME THRONE



まず、見た目でものすごく抵抗を感じるのがこの“ドームスローン”です。いつも利用する練習スタジオなどに、こんなイスと普通のイスが置かれていたら、まず9割のドラマーは普通のスローンを選ぶでしょう。

しかし、人間工学を基にデザインされたこのシートは、一見バランスの悪そうな見た目とは裏腹に、姿勢の矯正に非常に効果的で、誰でもただ座るだけで理想的なフォームでプレイできてしまいます。しかも、そのために何らかの負荷を感じる事は無く、ただ楽にして座っているだけで“ごく自然に”正しい姿勢になってしまうんです。

座る位置はドームの中央部分で、ここに座ることがとても重要です。と言うよりも、ドームを避けて座った場合は、このシートの特性が全く機能しないばかりか、すわり心地もよくありません。座る部分の面積は少なくなりますが腿の裏側がシートに付かないので、普通の丸型シートで言うなら、「前の方に座って、いつもよりも少しシート高を上げた時の感覚」に近くなります。
 

 

 総評

 

見た目は“珍”でも、使って納得の安心してお奨めできる“逸品”です。ちょっとした工夫に見えますが、驚くほど効果的です。姿勢に悩みを抱えるドラマーはもちろん、そこまで姿勢に問題を抱えていないドラマーでも、意外なほど安定してリラックスしたプレイの助けになってくれます。今後は各メーカーが追従していく可能性も十分に感じられます。何年後かにはサドル型並みに普及しているかも??

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■ 「2バスドラマーの悩みを一気に解決!!」が売り文句!!

2バスドラマー(ツインペダルを含む)にとって、ハイハットのセッティング位置は悩みの種です。なぜなら、サブフットペダルの隣にスタンドを置かなくてはならないうえに、その分シンバルの位置も遠くなってしまうからです。
これまでは、【我慢して普通のハイハットスタンドを使う】または、【多少かさばるが、セッティングの自由度が高いリモートハイハットを使う】という2つの方法が一般的な解決策でした。
このULTRA ADJUST HI-HAT STANDは、これを1つにまとめたような非常に合理的なアイディアが素晴らしい商品です。通常では考えられないような位置や角度でセッティングできてしまう斬新な構造は、今後のハイハットプレイに対しても様々な可能性を示しています。
 

アクション
9600 SERIES同様にリキッドドライブ機構を装備していますが、セッティングの自由度を高めた結果、少し雑な反応です。ワイヤーの曲がる角度によってもアクションが変化してしまうのが難点。戻りが遅れる傾向なので、繊細なハイハットワークには不向きです。
  重量
重量は約7kg・・・・。
重すぎます。シンプルなハイハットスタンド2本分ぐらいの重さです。


 

セッティング
★高さ
最高(ストレート状態でボトムカップまでの高さ)約1060mm
最低(アジャストをナナメ下に設定した場合)約820mm 


間接部分のパイプの長さは、約15cmですが、アジャスト部分を入れるとボトムパイプから最大で約20cmほどセッティング位置をドラマー側に寄せることができます。

ただセッティング位置を手前側に寄せられるというだけではなく、様々な角度や高さにセッティングできるので、新たな奏法やサウンドが広がる可能性も充分に示しています。
ただし、普通のハイハットスタンドのようにまっすぐにセットした場合には、間接部分があるばかりに、高すぎる位置でしかセットできないのが残念。普段高めのセッティングをするドラマーにとってもこれは高すぎます。

 

 総評

 

使ってみると、決して奇をてらった商品ではなく、合理的なアイディアに納得させられます。着眼点といい面白いアイディアを商品化する姿勢といい、専門メーカーならではの熱意には脱帽させられます。
ウルトラアジャストを採用したことで、特殊なセッティングで使えるという魅力は充分に持っていますが、【ストレート状態では逆に使いにくい点】【分割収納が出来ない不便さ】【1本のスタンドとして重すぎる点】など、惜しい所もたくさんあります。
スタイルを限定して使う分には問題ありませんが、更なる改良を施し、ぜひこれに続く次回作も生み出して欲しいと思わせる一品です。

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■ 海外で人気沸騰中!!? CATAPULT LINER MOTION

最新のテクノロジーが全て投入されたかのようなメカニズムに、従来のペダルとは全く異なる斬新なアクション、デザインも近未来??を連想させる、その名も“カタパルトライナーモーションペダル”。「一体どういう仕組みなんだ???」と、今回発表された新製品の中でも一際ドラマー心をそそられるものの一つです。しかし、そんな最先端のデザインとは裏腹に、このペダルがターゲットとしているのは、トラディショナルな“ヒールダウン奏法”のドラマーなんです。


 

 

仕組み

フットボード部とビーターをホールドしているカタパルト部が完全に独立した構造で、お互いを支えとしてレディポジションの位置をつくっています。この2つはそれぞれアンダープレートの前後で連結されています。
フットボードを踏み込むことで、フットボードの先端部分(普通のペダルで言うところのカムにあたる部分)の大きなローラーがビーターをホールドしているカタパルト部分の上を走り、カタパルトに連結されたビーターが打面をヒットする仕組みです。

ビーターが打面をヒットした後は、同じくローラーがカタパルトの上を走って、元のレディポジションの位置まで戻ります。

スプリングは、フットボードの真下でカタパルト部分と連結されており、ビーターが打面をヒットした後にカタパルトを手前側に引き戻す役目をします。





アクション

1:踏み込んだ時に、ビーターが打面に向かう方向では、従来のペダルよりもダイレクトに踏み込みのパワーが伝わりますが、戻る方向では従来のペダルとは異なり、極端に不自然(ルーズ)な感触になります。

2:普通のペダルの様にフレームにカムが付き、カムに付いたビーターが振れるという仕組みとは異なるため、ビーターのレディポジションは90°近くになってしまいます。構造上ビーターのバックストローク(振りかぶり)がなくなり、ダイレクトにパワーが伝わるものの、パワフルなショットは全く使えなくなります。

3:ダイナミクスは非常に小さな幅でしかコントロールできなくなってしまいますが、カタパルトの上をローラーが走るという仕組みなので、従来のペダルのような微妙な“遊び”は皆無で、ドラマーの足癖の影響を受け難く、常に正確で機械的なストロークを生み出します。
4:ビーターが戻る感覚が得にくい構造である為、ヒールダウン奏法でもさらに、クローズ奏法向けです。
※打面をヒットした後、次のショットが始まるまで打面とビーターがくっついた状態を基本とする奏法(この状態をレディポジションとするため、バスドラムのサスティーンも短くなります。)
 


 


詳細情報

サイズ比較
特殊な構造上、通常のペダルと比べて全長がこれだけ長くなります。
重量
約2kg
太鼓判ビーター??
標準装備されている特殊な形状のビーターは、通常の丸型ビーターのようなアタック感が無く、まるでハンコを押しているような気分にさせられる操作感です。。
シャープなアタックが得にくいかわりに、ソフトな音色が得やすくなり、打面の跳ね返りの影響を受け難い形状なので、特にクローズ奏法でのプレイが楽になります。
他には、重めのウッドビーターも意外と相性バッチリです。
 

 

難点

1:
最大の難点は、ローラーがカタパルトの上を走る際に出る「ゴロゴロゴロ」というノイズです。大音量のROCKならまだしも、ヒールダウン奏法を用いるような場面では明らかに問題です。レコーディングなどでも、このノイズをマイクが拾ってしまう事は確実です。

2:ヒールダウン奏法に狙いを絞っているとはいえ、音量が非常に得ずらいペダルで、逆に上半身の音量をバスドラムの音量に揃えなければならないという問題点もあります。

3:ペダルの全長が非常に長く、フットボードの真ん中辺りを踏み込むドラマーは、必然的にイスの位置を後ろにさげなければいけなくなります。すると、今度はセット全体が非常に遠くなってしまう事になり、普通のサイズのペダルでは無かった新たな問題を抱えることになります。
さらに、フッボードの前の方を踏み込むにしても、ローラー部分が邪魔で足を置けないので、妥協を強いられます。
 

 

 総評

 

見た目を大きく裏切って、「どれだけ楽にパワフルな音が出せるか?」という、現代のペダルメーカー各社の指向とは全く逆方向をいく一品です。時代の流れに反旗を翻すかのような思い切りの良さには、本当にメーカーの熱意を感じます。
しかし、いくらアイディアが素晴らしくても、その斬新さを覆い隠してしまうほどの致命的な難点は、「製品」と言うよりも、「試作品」というほかにありません。

踏み込みのダイレクト感はLUDWIGの名器、SPEEDKINGペダルに通じる部分も感じられます。“ヒールダウン奏法”や“足首を柔かく使ったタップ奏法”をメインとする、極限られたエリアのドラマーには確かに受け入れられる可能性もありますが、恐らく一般的に普及する事は無いでしょう。

ただし、製品としての難点が克服されれば、現代のフットペダル業界の「パワフル指向」が「ナチュラル指向」に切り替わるほどのインパクトがある斬新さです。うまく改良が施されれば、次回作や次々回作では“珍品”→“逸品”になるかも知れませんね。期待します。