REMOというブランドができたからこそ、ドラムヘッドは本皮製からプラスティック製へと移行することになったわけですが、なぜこんなアイディアが浮かんだのでしょう?
レモ氏の来日時の講演によると、こんな偶然が重なった結果がREMOヘッドが生まれるキッカケになったのだそうですよ。
REMOヘッド創始者のレモ氏は、もともとドラムショップを経営していたそうです。ある日マックス・ローチとバディ・リッチ(ドラマー界のLEGENDです!知らない人は今すぐチェック!)が偶然お店で一緒になりました。レモ氏を含め3人で立ち話が始まりました。
「ヘッドって破けてしまうよねー。」
「まったくだよ。」
「何とかならないのかな。」
と、当時主流だった本皮ヘッドに対していろいろ話をしたそうです。ちょうどその頃、レモ氏のお店は壁の修理をしていて、いろいろな工事用品が転がっていました。その中のひとつにプラスティックペーパーがありました。「あれ!これってドラムに張ったら意外といい(音がする)んじゃない?」そんな話が持ちあがり、よしやってみようと即席でプラスティックペーパーからヘッドを作ってみることになったそうです。
壁の工事用品のプラスティックペーパーをタイコの大きさに合わせてカットし、枠を取り付けてスネアドラムに張りました。※1
スティックを持って実際叩いてみると、、、
「スゴイいい音!!」
事実、驚きを隠せなかったようです。予想以上に音が良かった上、プラスティック製なので当初の問題点であった耐久性は抜群です。本皮ヘッドに変わる全く新しいヘッド誕生の瞬間です。この世で最初のプラスティックヘッドは『クリアヘッド』でした。
そのクリアヘッドの誕生以降、サスティーン等を調整する為にいろいろ試行錯誤が重ねられました。(この時期に、ベースフィルムとしてデュポン社のMylarフィルムに行き着いたのでしょう。)
そして、プラスティックペーパーを小さく丸く切ってヘッドに張り付けたものが『CS』。ペーパーを二枚重ねにして作ったヘッドが『EMPEROR※2』。なかでもユニークなものはクリアヘッドの上に接着剤を塗って砂をふりかけたものが『COATED』になったのだそうです。プラスティックヘッドを作ってからというもの注文が殺到したため、急遽ヘッド専門の工場を建てたといいます。
プラスティックフィルムをドラムヘッドとして利用するという発想の背景にはこんなエピソードがあったんですね。
※1:本皮ヘッドが主流だったこの時代、ドラマーは買ってきた本皮のシートを自分で木枠に巻きつけて使うというのが当たり前だったそうです。当然ながら、ドラムショップを経営していたレモ氏も、こんなことは朝飯前だったはずです。
※2:EMPERORヘッドも、VINTAGE Aと同じく2枚フィルムでつくられていますが、ベースフィルムの厚みが大きく異なります。 |