GIBRALTAR / TOM SUSPENSION SYSTEM

「タムを手に持って叩いた時は、十分なサスティーンが得られ、とても自然に気持ちの良いトーンが得られるのに、どうしてタムホルダーにセッティングすると音が短くなってしまうのか?何とか手に持った時と同じように響かせる方法はないものか・・・。」という思いから考案されたのが、1980年頃に登場したサスペンションシステムの元祖、RIMSです。
その後、80年代後半頃になると、当時幅広いスタイルのドラマーから絶大な人気を誇っていた、あのジェフ・ポーカロがPEARLのセットにこのシステムを導入したことで、日本国内でもこの方式が注目され始めました。装着後のサウンドの変化が評判になりましたが、当時は1本数万円という非常に高額な商品という事もあり、なかなか普及はしませんでした。
そして、90年代に入るとコスト面の問題が解消され、DWをはじめ、ドラムメーカー各社がこのシステムを導入し、今日ではほぼ全てのメーカーで各社とも自社製のサスペンションが採用されるようになりました。
中でも、GIBRALTAR/TOM SUSPENSION SYSTEMは、元祖RIMSとほぼ同形状ということもあり、当時からのファンを中心に盛り上がりを見せている一品です。

 サウンド比較

 

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サウンドファイル

 ※ノーマル

RIMS仕様

※使用楽器
YAMAHA/100周年モデル12"X10"TT

楽器によってRIMS仕様にした場合の違いに大小の差はありますが、アタックが柔かくなり低音のサスティーンが大幅に増えて、楽器の鳴りがかなり強調された音色に変化します
特に、旧タイプのYAMAHAやPEARLに代表される、タムホルダーがシェルの内部にまで差し込まれるタイプの場合は、サスペンションシステムにした時のサウンドの変化も大きくなります。

 ポイント

取り付け方と使用上の注意点


 

 

各サイズのラグの位置に、ちょうどボルトを通す穴が来ます。ラバークッションを挟んだ上で、その穴にチューニングボルトを通したら、付属のプレートに各社のタムブラケットを取り付けて完了です。
このタイプのサスペンションシステムは、タムの重量が重い場合や口径の大きなタムになると、それを支えるためにチューニングボルトに対しての負荷も大きくなるので、長期間この状態でいるとボルトの変形などが起こる場合があります。
 

 長所と短所

 

 

例えば、シェルが厚めの楽器や、ダイカストフープ・小口径のタムなどは、もともと音の芯がハッキリ出やすいタイトな鳴りなので、このサスペンションシステムを使う事で、広がりのある響きが得やすくなります。また演奏上の利点としては、小さなタッチでも十分な鳴りが得られると共に、パワフルなタッチでもシェルの響きを抑えないので、安定して迫力のあるサウンドが得やすくなります。

反対に、シェルが薄めのものや、もともと鳴りの良い楽器・口径の大きなフロアタムなどは、今度は楽器の鳴りが大きくなった分アタックも柔かくなり、音の立ち上がりが遅くなります。サスティーンが長くなるのでタムのロールやパワーショットで連打する場合などにダイナミクスや一打ごとの音の輪郭も出にくくなってしまいます。

「シェルの鳴りを妨げない」というのが、このシステムの最大の利点であり、確かに楽器単体のサウンドを可能な限り自然な状態で引出すと言う事に関しては、絶大な効果があります。しかし、実際にこの方式が考案される以前の音楽で全てのタムの鳴りが『不自然だったかどうか?』というところに焦点を当てると、そんな事もないはずです。

使用する楽器やドラマーのスタイルと相性が合えば、とても心強い味方になってくれる素晴らしいシステムですが、とりあえず付けた方がいいと言うよりは、長所・短所のバランスを十分考慮して使うべき商品でもあります。