YAMAHA / FP-720パーツいろいろ





 
70年代後半にYAMAHAが発表したFP-701&702は、ベルトドライブ特有のブレがなく、パワーの乗り方などもそれまでのモデルと比べ格段に増した上に、安定感の良さも手伝って、同時期に発売されていたライバル商品のTAMA/HP-30やPEARL/P-750を圧倒し、一躍ベストセラーモデルとなりました。
その後、80年代初めにフープクランプをサイドスクリュー式にしたFP-710が登場し、さらに80年代後半には、カム形状をビーターが打面に対して平行に当たるように改良 し、アングルプレートを3穴式にして、より大パワーにも対応できるようになった最終型のFP-720が登場することになります。
ベルト式の素直な反応に加えて、このタイプのペダルの華奢なイメージを覆すほどのパワフルさは、ハードロックやヘヴィーメタルなどの大パワーを必要とするドラマーからも絶大な信頼を受けていました。

ちょうど80年代に入った頃から、フットペダル界では、DWを始めドラムメーカー各社がチェーン式ペダルを投入し、CAMCOやPEARL/P-850・P-880などを中心にその人気に火がつくとベルトドライブ人気は一気に下降してしまいます。
※当時、DWなどの海外メーカーモデルは、国産モデルの約3倍近い価格や流通の面から、今ほど手に入れやすい状況ではありませんでした。

そんな時代背景の中でもFP-720は根強い支持を受け、90年代後半に生産完了となるまで約20年もの間、様々なスタイルのドラマーから愛され続け、現在でも多くのドラマーにメインペダルとして愛用されている逸品です。

現在では、このモデルを新品で入手する事は不可能となってしまいましたが、そんな名器の『余韻』とも言うべきこれらのパーツ類は、数に限りがあるものの今でもストックされています。

 NO.1

■フットボード&ロッド

FP-700番台のパワーの源であるこのフットボード。一見、わかりにくいのですが、最初期型と最終型ではデザインが若干異なり、最終型は約40g重量が増します。

 NO.2

■ベルト

滅多に切れる事はない非常に丈夫なベルトですが、すでに生産完了になっているので今後の為にも予備は持っておきたいところです。

  NO.3

■アングルプレート&ローラー
 
701.702.710用のアングルプレートは残念ながらすでにストックも切れていますが、720用のものはまだ入手できます。ローラー部分も同様に、初期モデルで採用されていた金属製のものは販売完了となってしまいましたが、プラスティック製のものは入手できますよ。
※ローラー部分はTAMA/HP-90S-63でも代用可能です。

ワンポイント

■マニアック編 701.702.710と720の違いって?
  701.702モデルは構造は同じものですが、ビーターが異なります。702になるとシャフト部分に焼き入れ加工が施された、現行モデルと同じBT912が付属します。710モデルはフープクランプの幅が広くなり、ネジがフットボードの真下からサイドに移動して付け外しの利便性が高まった事とフレームの強度が上がりましたが、それ以外は701.702と同じ構造です。
しかし、80年代後半に710から720に移行する段階では様々な箇所に改良が加えられたことで、より丈夫でパワフルになり、それに伴ってアクションも多少変化することになります。


FP720


FP701&710

カム
写真で見ると一目瞭然ですが、710まではビーターを受ける部分がカムの中央寄りに配置されているのに対し、720になるとこの部分が外側にずらされています。これにより、ビーターが打面に対して平行に当たるようになった事と、遠心力も大きくなる為、同じように踏み込んだ場合によりパワー感を増したアクションが得やすくなりました。
反面、パワー感を強めた事で、それまで細かいニュアンスもつけやすかった710モデルとの印象も大きく変化しました。
■ワンポイント ★FP-720に他社のビーターを付けたい!
当店には、「FP-700番台のペダルにDANMARやLUDWIGのビーターが付かないんだけど何とかならないか?」という相談が多く寄せられます。
他社のビーターを取り付ける場合は、ビーターを受ける部分の径を広げる加工をすれば問題なく取り付けられます。
もちろん加工は当店で承っておりますので、お気軽にご相談くださいませ。


FP720


FP701&710

アングルプレート
710モデルまでは、4穴のアングルプレートが採用されていますが、720になると3穴のプレートに変更されています。ローラーも金属製からプラスティック製に変更されました。


720   701


701 720

その他
その他の部分で目立つ違いは、ゲートの両端にあるベアリングが組み込まれた部分をネジ留めにして、左右への微妙なブレを解消した事や、フットボードが若干改良され重量が増した事などが挙げられます。
  ■GATEWAY視点で見る、現行品時代のFP-720
  現在では、欲しい人は本当に血眼になって探しているFP-720ですが、面白いエピソードがあるのでご紹介致します。
FP-700番台は、ベルトドライブペダルとしては現行品時代から圧倒的な人気商品ではありましたが、やはりチェーンドライブ全盛の80年代は、根強いファンを除いてその人気も落ち着いた状況が続いていました。
そして、「あのペダルは手に入らないのか??」と、その人気が盛り返してきたのは、生産完了のニュースが入り最終型のFP-720がカタログから消えてしまった90年代後半になってからだったんです。
ちょうど新しいフィーリングのチェーンペダルに皆が飽きて、初心に戻ろうとFP-720に帰ってきた時期がこの頃だったのかも知れませんが不思議なものですね。