DW / ORIGINAL SERIES DW5000NX

DW/5000NXは、現代のあらゆる音楽スタイルに対応できるための必要最低限の機能は備わっていますが、根本的には1960年代に登場した名器GRETSCH/#4955 FLOATING ACTIONのシンプルな構造をそのまま活かしたつくりになっています。
最近でこそフットペダルといえば、「アンダープレートつき・丈夫で壊れにくい・アクションがとても滑らか・パワーが乗りやすい・あらゆる部分が可変できる」と、多機能のものが主流ですが、もとを辿ればそれらのペダルも、このシンプルな構造の弱点を補う為に工夫されてきたものです。
しかし、そんな便利なものが主流になってみても、今なお、多くのドラマーがさらなる耐久性や反応の良さを求める傾向にあるのも事実です。ペダルの強度を上げるにしても、反応を良くするにしても、必要以上というのは必ず弊害も生まれてしまいます。
DW/5000NXは、そのシンプルさゆえに、サウンド面でも奏法面でもペダルコントロールについて気付かされる点が非常に多く、実は本当に見直さなければいけないのは楽器の構造などではなく、ドラマーの奏法の方なのでは??という気持ちにさせてくれますよ。

 

ベルト+偏芯カムの素直な踏み心地




 

踏みしろの深さと、アクションの素早さが特徴的な偏芯カムに、1ショットごとの踏み込みの感触がダイレクトに伝わるベルトストラップのトラディショナルな組合せは、チェーン式のような機械的な安定感がない変わりに、使いこなせればまるで自分の足の一部かのような一体感が得られます。ベルトは3段階、アングルプレートは無段階で調節出来るので、 シンプルながらビーターの角度だけでなく、フットボードの微妙な角度を調整しやすいのも魅力です。

 

気付かされる奏法上の悪癖・・・!!

 

丈夫さが売りのペダルは、多少無理な負荷がかかってもお構いなしに動いてはくれますが、無理をさせている事に気付かないまま長年負荷がかかりっぱなしの状態になると、ある日突然ダメになってしまう事があります。5000NXは見た目通りシンプルな構造なため、踏み方が悪いとプレートの動きに左右のブレが出たり、ロッドの歪みを起こしやすくなり、見た目にも明らかな異常が見られます。
つまり、このペダルの自然な動きに逆らわないように使っていれば、無駄のない理想的な奏法が、ごく自然に身に付きます。

 

オールドペダルに見られる難点も克服!!

フープクランプ部分
旧タイプの5000Nではフープクランプの開き具合がグレッチサイズになっているため、他メーカーのバスドラムに取り付ける場合にうまくセッティングできない事もあるのが難点でしたが、フープの厚みに 合わせてクランプの開き具合を調節できるようになったので、どんなメーカーのバスドラムにも無理なく取り付けられるようになっています。





ボールベアリング部分
同じく、旧タイプのものは、支柱に組み込まれたボールベアリングが演奏中のシャフトの揺れによって左右に動いてしまうので、長く使っている内にアクションにも微妙な遊びが生まれてしまいます。5000NXはその支柱内のベアリングのさらに外側にリングが固定されていて、ベアリングとシャフトが支柱の外に飛び出さないようになっています。オールドタイプで気になるシャフトの左右への微妙なブレがなくなり、ペダルノイズも出ないので旧タイプよりも格段に安定したアクションが得られます。
アンカー(ツメ)もついているので、よほど強力な踏みつけでない限りは十分な安定感があります。

 

カスタムいろいろ!パーツいろいろ!!

SP001-1

SM005

L1286

SSP
■例1:ヴィンテージペダル風
・SP001-1ヒールキャスティング
・SM005 ヘビーデューティーヒンジ
・LUDWIG/1286ハードフェルトビーター
・GATEWAY/オリジナル スーパースプリング

見た目も感触もかなりヴィンテージペダルに近づきます。偏芯カムとベルトの反応の良さを活かすのに最適なセッティングです。

SM1207

SM005

BT-914

SSP
■例2:パワフルさと軽快さを活かしたアクション
・SM005 ヘビーデューティーヒンジorSM1207 デルタボールベアリングヒンジ
・YAMAHA/BT-914
・GATEWAY/オリジナル スーパースプリング

ビーターの重さが気になる場合は、ベアリングヒンジをチョイスするとバランスが取りやすく、それほど気にならないようならアクションの素直さを活かしやすいヘビーデューティーヒンジがおすすめです。

 

現代のペダルに対しての警鐘を鳴らす貴重な存在!!

 

DWに限らず、当店に寄せられるペダルに関する修理依頼や質問の中には、「ビーターがすぐに折れてしまうので丈夫なものがほしい」「前回交換してからそれほど時間が経っていないのにヒンジが引きちぎれてしまった」といった強烈なものもあります。
不良品を抜きにすれば、金属パーツがこのような損傷を受けるというのは、単なる消耗ではなく、よほど異常な力がペダルにかかっているということになります。
その点では、今も新たな構造の開発や材質の変更などにより、様々なドラマーの様々なニーズに対応できるよう各メーカーともあらゆる方向から日夜努力しています。
そして、その結果の弊害とも言えるのが、強度の面では、どうしてもペダルの重量が大きくなってしまい、踏み心地が重くなってしまうことや、強力な噛み付きで、フープへの負担やベースドラムの響きも抑えてしまう点、反応の面では、確かに滑らかではあっても、軽く踏んだつもりが必要以上にパワーが乗ってしまったりというようにダイナミクスが付けにくくなってしまう事です。
どんなに丈夫でも、どんなに反応が良くても、そのおかげでサウンドや表現力が犠牲になってしまうのでは本末転倒な話です。
スプリングの反動を利用して、ビーターを動かすのがフットペダルの役目であり、その振り幅や力加減をコントロールするのはあくまでもドラマーの仕事だと言わんばかりの、5000NXの説得力のあるシンプル な構造は、全てのドラマーが敬意を持って見つめなおすべき貴重なものなのかも知れませんね。